遺言

ちらしのうら

沈んでいく、音の海の底

先生はすごく優秀な心理士さまだったと思うの

距離の取り方が絶妙だった。

つめたくも、はなれていたわけでもなく、「助ける」と、もうどうしようもなくなって俯いていた所に来てくれてそう言ってくれて、確かにその手に救われた。だけど、「それはあなたのちからでやること」は、泣いて縋ってもやってくれなかった。その代わりに、どうやれば上手くやれるのか、その手解きをしてくれた。

「距離を取りたい」と思っている人はすぐに分かる。興味の無い人も、口だけの助けるも、わかる。(転々としているのもあって)そもそも心理士さまにそんなに期待をしていない私は、そう言う気持ちを知ると、信じるなんてとても、何もお話する気持ちになれない。でも、近すぎてもだめで。私が、憑け入る隙がある人も、長期的に見れば、どうしても上手くいかない。それは分かっていて、でも、手放しに「助ける」と言われて、縋って転んでもいいと思えれば、私はその関係はとても、最初だけは、ここちがいい。あんしんする。それじゃ、ダメなんだよね…

先生、先生の言うように、わたし、ちゃんと、誰かとこの世界で生きていきたいって、あなたがそういう世界が好いよねと言ったから、私も、その中で生きたいと思ったんです…いつか、せんせいのいう治療のさきに、そんなやさしい、有り触れたしあわせが待っていたら…いいのになあ……

 

それまで生きていたら!自殺したらごめんなさい。えへへ。今日、生き延びました。先生、先生のことわすれないよ。夏のあの日、私のところに来てくれて、手を掬って、導いてくれて、有難うございました。先生、先生、だいすきでした…ただ、ただ、透明で純粋な大好きを、先生へ。覚えていますから。ずっとずっと、先生のこと、覚えています。ありがとう、ありがとう、有り難う、せんせい。