遺言

ちらしのうら

海の底で深呼吸を

人達の中にいると、どうして私はこんなふうに一人きりなのだろうと、普段目を逸らしていた事実を、まざまざと思い知らされる。途端に不安になって、ピルケースを漁る。ああ、これを飲めばまた薬中と罵られる。異常者は社会から出てけと怒鳴られて、そして、どうしてただここに居ることだけなのに出来ないの、と、嘆かれる。

泣きたいのは私の方よ。だって、私にもさっぱりわからない。みんなが普通に出来ることが、なぜ、私には出来ない?どうしてそうやって手放しで信じられて、疑わずに信じ続けられて、友達で居られるの。関係性を維持できるの?

「あなたがそうして精一杯頑張っているのは分かるけど、それがバレた時点であなたの居場所はどこにもないんですよ」と、医者は冷たく言った。

ちゃんとした病名や障害がある訳ではない、異常者にも、一般的な人間にもなれない私は、一体これからどうやって生きていけばいいのだろう。いや、もう、ひとりきりも、たくさんの人も、ひなたもひかげも、怖くて仕方が無い…薬をたくさん飲むと、脳が縮むらしい。…私が心配なのは、ただ、それがいつか家族に迷惑をかけるんじゃないかということです。その前に消えたい。

私がこうして間違ってるのは百も承知でなんとか自分を守る、唯一の術を奪い、その上で、死んだら家族が悲しむんだよ、などと呪詛を吐くのをやめて。私のいのちくらい、私に、どうか。それさえも許さないと言うなら、この心を殺して、そのあとならいくらでも、好きにして。

薬を流し込むと、それだけであんしんするのだ。もう、もうだめなんだ、私というものが、きっと、手遅れなんだ はやく、はやく消し去って…そんなことを思う。思った。思っていた。

 

死にませんし、良くなる努力もするし、諦めません。だから好きにいうくらいは、許して欲しい。なにも今になって「消えたい」なんて、思い始めたわけじゃなくて、こんなの。もう、ずっと、ずっとずっとずっとあって、私は、時々すごく切なくなってめそめそ泣いていても、次の瞬間にはへらへら笑ってる。そんなもの、心配するだけ無駄です。ほっといても塞がる傷みたいに、どうでもいいもの。