遺言

ちらしのうら

手紙

思い出として美化された、「あいつは今どうしてるかな」なんて微塵も思われたくない、幸せだといいな。なんて、そんな適当な言葉で済まされるヒトになりたくない、けど、私は、夕陽を見てあの人を想う。友達どころか知り合いでもない、赤の他人であるあの人に宛てる「幸せだといい」が、この陽のように穏やかに私を救済することを、知りながら

知り合いにも、友達にも、家族にさえ向けない優しく凪いだ感情は、きっと最期に想う気持ちに似ている。

あの人が、他人でよかったと思うんだ。

そうでなければ、この感情は、ここまで白く在れなかった。空のように複雑に、幾つもの想いを織り交ぜてなお澄んだ透明なままの、きれいな気持ち。