遺言

ちらしのうら

せめて

一番の後悔は、優しい人に出会ってしまったこと

救ってくれないなら、救わないなら、ひとさじも、掬ってなんてくれなくて良かったのに。この手に触らないで。

独りで胃液を吐きながら、冷たい身体を冷えた布団の中で抱いて、死んでいくのがお似合いだ。それでも乗り越えて生きた、あの夜、決めたことを、1人でどうにかするという決意、そうするしかないという諦めを、今更、今更どうしようも出来ないことを、「もしかしたら、わたしも幸せになっていいのかもしれない」なんて、不相応な願いを抱いたりして、夢を見て、その先にあるのが…より深い悲しみであることも、知りながら、それでも、それでも…やさしくて、あたたかい手を、求めて足掻いて、右往左往、なんて、惨めな。汚らしい。穢らわしい。そんなことを願う権利が、ある訳がないのに。

あの人たちのことは、好き。感謝もしてる。でも、忘れたい。早く忘れてしまいたい。じゃ無ければ、私は、生きていくことが出来ない。死にたくてしょうがない…死ぬべきだ、そう思うのに、死ぬ為には理由が少なすぎて、許可もなくて…生かしてくれた人達のために、私はせめてその恩を支払わなければいけないのに…それさえ、出来ない。

何も望まない。辛い気持ちさえ無ければいい。楽しいという感情も要らない。辛いという気持ちは生きていく上で妨げになる。だからいらない。感情もこころも、もう要らない。私が私であるという認識も、記憶も…生きてさえいれば、働いてお金を支払うことさえできれば、もう何もいらない。それは義務だから。義務さえ果たせば、私はやっと、死ぬことができるんだ

 

一緒に雨に濡れてくれなくていいよ。風邪をひいたら大変だから…私は、風邪をひいてそれが理由で死ねるならしあわせ、なくらいだから、関係がない。私の所為で雨に濡れる必要なんて、全くないよ

みんなが、みんなが幸せだといい。そして世界が回っていれば。もうなにも、なにも。