遺言

ちらしのうら

先生、これは「にんげん」なのですか?

先生と話したこと憶えられないの

先生が書いてくれた文字、一生だいじにする

死ぬ時も持っていく

今日はね、卒業式でした。それから、半分の記憶を失くしてしまったけれど家族と卒業旅行なの。薬の作用で吐き気があったけど、夕飯は美味しかった。お刺身も新鮮で、白身魚が多くて、しっかり歯応えもあって、つみれ汁がとてもおいしくて…デザートのいちごも…

お風呂も気持ちよかった。特に露天が!温度がちょうどよかった!

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海に行こう、行こうか

みんなを連れて旅行へ行こう

最期の旅行だ

延期に延期を重ね

その日迄、一生懸命生きろ

そうしたらさ…どんな事があっても、「よかったよ」って笑えるから

 

先生がさ、指し示してくれた未来のみちは、

自分を殴るような優しい愛しているじゃ、無い、ところにある、柔らかい抱擁、冷たい海の底ではない、温かい人の輪

だったんだよね

 

そうなれたら…どんなに、よかったかな…?

でも好いんだ、先生がくれた言葉があれば私は

こんな幸せなこと…今でも信じられないんだ

いちクライエントに、こんな…

分かってるよ、勘違いしない。私はただのクライエントでしかなく、私と先生をつなぐのは冷たい紙切れと硬貨であること

だけど、先生には知って欲しいかもしれないな

「〇〇〇〇〇は死んだ」ってことを

生かそうとしてくれた私を私が殺すよ…

生きていた私を私が殺すよ

私を愛すよ

 

ラムネ先生、ありがとう

先生には、「私」で、一緒に話がしたかった

こんな私じゃなくてさ…あの子じゃなくてさ…

 

 

ズタズタに裂かれた身体をなんとか寄せ集めて縫い合わせる 不格好で変梃な肉塊を私と呼ぶ

生きていくため最低限のパーツを繋いだ穢い私はそれでも許されたいと息を吸う

愛されたいと継ぎ接ぎの両手を伸ばす 途中で折れても捥げても爛れてもその目に傷ついても、止まない愛して、を抱えて息を吸う

「愛しているよ」なら、なんでも許すからどうかこの手を取って