遺言

ちらしのうら

のこしてゆく言葉

想いを打ち明けること、と言うのは、想いを暴かれること、と、おなじ

なにひとつ伝えたいことなどなくて、交わしたい言葉は表面を優しくなぞるばかりのもの

それでも良いのではないか

暴いたなら幸せになれると言うことはないのだから…

境界線を失くして混ざり合う、その意思も覚悟もないのなら、きれいな言葉だけを送り、受け入れ、セロファン越しの鮮やかな世界を愛でる。形ばかりの愛を伝える。嘘に彩られたうつくしい言葉で愛す

それは、悪いことでは、ないと思う…間違っても、いない。…ただしくは、なくとも。

ただしいことだけが、正解ではない

この世界は、なないろだけではないのだから、

ゆがんでていびつでからっぽでも、それが優しくて柔らかい。穏やかで幸せ。なら、それが一番、好い。

愛してくれなくても、凍えそうでも、ごみばこで眠る夜も、腥い朝も…そして終には私が何者か分からなくなっても…生きていても、死んでても、安らかならばそれが好い